遺留分侵害請求の消滅時効|時効を止める方法はある?
遺留分侵害額請求とは、遺贈や遺言などによって自身の相続分を侵害された相続人が、他の相続人に対して法定相続分に該当する財産や金銭を請求する制度です。
本記事では、遺留分侵害額請求と消滅時効について詳しく解説をしていきます。
◆遺留分侵害額請求とは
遺留分とは、法定相続人が最低限相続することのできる財産の割合のことを指します。
遺贈や遺言の影響によって、この遺留分を侵害されてしまった場合には、他の相続人に対して、遺留分侵害額請求訴訟を提起することができます。
この遺留分を請求することができるのは、被相続人の直系尊属である親か、直系卑属である子のみとなっています。
第3相続順位である兄弟姉妹は遺留分を主張することができません。
兄弟姉妹が遺留分を主張することができない理由としては、被相続人の死亡によって経済的に困窮する可能性が低いからです。
被相続人の子どもであれば、独立していない限りは相続人と家計が同一であることから、被相続人の死亡によって、経済的な不利益を受けてしまう可能性があります。
また、被相続人の親であれば、すでに仕事を定年により退職しており、年金と被相続人の収入で生活をしているという場合があるため、被相続人の死亡により経済的な不利益が発生する可能性があります。
もっとも、兄弟姉妹の場合であれば、被相続人の経済状況に依存しているということはあり得ず、独自の家計を築いている可能性が高いため、遺留分の主張が認められていません。
◆遺留分侵害額請求の消滅時効
消滅時効とは、ある一定の期間が経過することによって権利を消滅させることで、債務者の法的安定を図るための制度となっています。
消滅時効の一般規定は民法166条にありますが、遺留分侵害額請求の消滅時効については個別で条文が設けられています。
1048条に遺留分侵害額請求の消滅時効に関する事柄が規定されており、「相続の開始及び遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年」という主観的要件と、「相続開始の時から10年を経過したとき」という客観的要件があります。
・相続の開始及び遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年
相続が開始したこと及び遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知ってから1年以内に権利を行使しなかった場合には、遺留分を請求することができなくなります。
この主観的要件は、単純に遺贈や贈与があったということだけではなく、その遺贈や贈与が遺留分を侵害するものであったということまで認識をしている必要があります。
・相続開始の時から10年を経過したとき
相続の開始から権利を行使せずに10年が経過すると遺留分を請求することができなくなります。
これには遺留分権利者の知・不知を問いません。
主観的要件に比べて期間が長くなっている理由としては、何らかの理由で疎遠になっている相続人がいる可能性があることから、救済として期間を延長したものと考えられています。
◆時効を止める方法
遺留分侵害額請求の消滅時効を止めるにはどうしたら良いのかについて解説をしていきます。
・内容証明郵便で通知書を送る
消滅時効を一度止めるためには、遺留分を請求する相手が対して、以下の事項を記載した通知書を内容証明郵便で送りましょう。
・請求をする本人と相手方
・請求の対象となる遺贈、贈与、遺言の特定
・遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求する旨
・請求の日時
内容証明郵便は、誰が誰にどのような内容を送ったのかということを郵便局が証明をしてくれる制度となっています。
そのため、内容証明郵便で通知書を送ることによって、証拠として利用することができるため、相手方が通知書が届いていないと言う言い逃れをできなくすることができます。
もっとも内容証明郵便を送付して、安心というわけではありません。
少しややこしいのですが、遺留分侵害額請求を行使したことによる金銭支払い請求権は、遺留分侵害額請求とは別の権利として5年の消滅時効にかかります。
遺留分侵害額の請求をしても、金銭請求を5年間行使しなければ、消滅時効によって、金銭請求ができなくなってしまいます。
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弁護士 黒川慶彦
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- 経歴
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- 昭和55年
- 埼玉県所沢市生まれ
- 平成15年
- 中央大学法学部法律学科卒業
- 平成17年
- 司法試験合格
- 平成20年
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法律事務所勤務
一般民事から企業法務、知的財産訴訟等幅広い分野の案件に携わる。
- 平成23年
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都内医療機器輸入商社にて勤務
法務部門(国内外契約業務、労務紛争等)
物流部門、マーケティング部門の責任者を歴任。
- 平成30年
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真英法律事務所設立
菊名支店代表
- 令和4年7月
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