年俸制社員の残業代|請求時の注意点や支払わないケースなど
残業とは、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えてした労働をいいます。
残業時間には、通常の賃金の代わりに法定以上の割増賃金を支払う義務が生じます。
そして、年俸制とは労働者の賃金を1年単位で決める賃金制度です。労働者と使用者の合意によって額が決まし、昨年度の成果が反映されます。
労働基準法24条2項で、「毎月1回以上、一定の期日を定めて支払うこと」と定められています。
そのため、年俸で設定された金額を数回に分割して支払う場合もあります。
では、年俸制の労働者に残業代は発生するのでしょうか。労働時間ではなく、年単位で賃金が決められているため、問題となります。
このページでは、年俸制社員に残業代が発生するのか、請求時の注意点、支払われないケースについてご説明します。
◆年俸制社員に残業代が発生するのか
結論から言うと、年俸制が採用されているかどうかと、残業代が発生するかは直接的には関係ないため、「残業代が発生する条件をみたすと、残業代が発生します」。
残業代が発生する条件は、原則として上記法定労働時間を超える労働という積極要件のみです。 もっとも、後述するように、残業代が発生しない場合があります。
◆請求時の注意点
・残業代の計算
残業代の計算は以下のように行います。
1時間当たりの賃金×残業時間数×割増率=残業代
残業時間数は問題となりませんが、後述するように、客観的証拠によって管理しておくことが重要です。
割増率は、時間外労働は最低1,25であり、深夜労働の場合(22時から翌5時までの労働)、1.25です。
よって、時間外労働が深夜に及んだ場合の割増率は最低1.5となります。
次に、1時間当たりの賃金は次のように計算します。
年俸額÷{(365日-1年間の休日数)×1日当たりの所定労働時間}=1時間当たりの基礎賃金
・証拠の収集
紛争が生じたときに備えて、客観的証拠を用意しておくことは重要です。
雇用契約書・給与明細・就業規則のコピー・出退勤時間がわかるもの(タイムカード、出勤簿、帰宅時のタクシーの領収書等)・残業時間の労働内容の資料(日報)等が必要です。
・時効に注意
残業代の支払い請求権は、消滅時効の対象となります。そして、消滅時効が完成すると、同請求権を行使することができなくなります。
2020年3月31日までに支払日が到来する請求権は、2年で消滅します。
そのため、2022年7月を経過した現時点では、残業代の請求権は消滅しています。
一方、2020年4月1日以降に支払日が到来する請求権は、3年の消滅時効にかかります。
◆支払われないケース
・みなし残業制の導入
あらかじめ、一定時間の残業代を年俸に組み入れておく制度をみなし残業制度をいいます。
残業時間を上回る残業をした場合、差額分の残業代が発生します。
しかし、固定残業時間として決められた残業時間を下回る残業をした場合には、それ以上の残業代は発生しません。
・管理監督者にあたる場合
労働基準法上の管理監督者にあたる場合、残業代が発生しません。
もっとも、深夜手当については発生します。
労基法上の管理監督者にあたるためには、おおよそ以下の要件をみたす必要があります。
1 労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容・責任と権限を有していること
2 現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないようなものであること
3 賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていること
労働者保護のための時間外割増手当を必要としなくても、保護に欠けないと認められる者であることが必要となります。
お困りの際には、黒川慶彦法律事務所までご相談ください。黒川慶彦法律事務所は、横浜市、川崎市、世田谷区、町田市を中心に活動しており、労務問題や相続問題、不動産トラブル、企業法務、その他各種法律問題についてご相談を承っております。
依頼者様のご期待に添えるよう尽力させていただきます。
02BASIC KNOWLEDGE事務所が提供する基礎知識
-
不動産売買契約書のチ...
不動産を購入する際には、一般的に契約書を取り交わします。高額な売買となるため、契約書の内容はしっかり確認し、誤りや誤解のないようにすることが大切です。 特に、以下の点に注意しましょう。・売買物件の内容・売買金額 […]
-
遺留分侵害請求の消滅...
遺留分侵害額請求とは、遺贈や遺言などによって自身の相続分を侵害された相続人が、他の相続人に対して法定相続分に該当する財産や金銭を請求する制度です。 本記事では、遺留分侵害額請求と消滅時効について詳しく解説をして […]
-
相続人と被相続人につ...
人が亡くなると相続が開始し、亡くなった人の財産は特定の親族に承継されることになります。その際に、財産を承継する人を相続人といい、亡くなった人を被相続人といいます。 遺言書において、誰に財産を相続させるという旨の […]
-
社員からパワハラで訴...
近年、職場でのハラスメントが取り沙汰されており、とりわけパワハラ問題が増加しています。万が一、従業員からパワハラで訴えられた場合にどのような状況が考えられるでしょうか。本記事では、企業がとるべき適切な対応や避けるべき対応 […]
-
法定相続人の範囲と順...
法定相続人には、親族であれば誰でもなれるわけではありません。まず、被相続人の配偶者は相続人になります。そのうえで、配偶者以外の親族が法定相続人となる順位は以下の通りです。①被相続人に子がいる場合には、子が法定相続人になり […]
-
予防法務とは
予防法務とは、将来法的紛争が起きることを事前に想定し、トラブルを未然に防ぐための対策をしておくことをいいます。 たとえば、労務分野においては、以下のような対策が重要です。 ・雇用契約書や就業規則、賃金制度の整備 […]
03SEARCH KEYWORDよく検索されるキーワード
-
エリアに関するキーワード
04LAWYER弁護士紹介
私たちが提供したいものは、リーガルサービスの一歩先にある「安心」という価値です。 法的観点からの助言に止まらず、プラクティカルな解決策を提示することによって、 クライエント様が次の一歩を踏み出すために必要な「安心」をお届けします。
弁護士 黒川慶彦
-
- 経歴
-
- 昭和55年
- 埼玉県所沢市生まれ
- 平成15年
- 中央大学法学部法律学科卒業
- 平成17年
- 司法試験合格
- 平成20年
-
法律事務所勤務
一般民事から企業法務、知的財産訴訟等幅広い分野の案件に携わる。
- 平成23年
-
都内医療機器輸入商社にて勤務
法務部門(国内外契約業務、労務紛争等)
物流部門、マーケティング部門の責任者を歴任。
- 平成30年
-
真英法律事務所設立
菊名支店代表
- 令和4年7月
- 新横浜の現事務所に移転し、『黒川慶彦法律事務所』に改称
-
- 所属
-
神奈川県弁護士会
神奈川法人会
新横浜ロータリークラブ
05OFFICE事務所概要
名称 | 黒川慶彦法律事務所 |
---|---|
所在地 | 〒222-0033 神奈川県横浜市港北区新横浜3丁目20-5 スリーワンビル601号室 |
連絡先 | TEL.045-628-9570 FAX.045-628-9590 |
営業時間 | 平日 9:30~18:00(事前予約で時間外も対応可能) |
定休日 | 土・日・祝日(事前予約で休日も対応可能) |
相談料 |
初回相談/30分無料 初回電話相談/10分無料 |